薬局転職を考えた際、全員がするべきことがあります。
それは、薬局見学です。
その薬局がどんなところなのか知るために、見学だけは絶対絶対するべきです。
また、薬局人事との面接で
「こんな薬局だよ」
と言われても無条件で信じてはいけません。
薬局人事の方が例え嘘を言ったつもりがなくても、人それぞれ感じ方は異なります。
自分が求めていた条件に合う薬局かどうか確認することで、薬局側も自分も不幸になることを防ぎます。
では、仮に薬局見学はするとしましょう。
薬局見学で見るべきポイントについてご存じですか?
実際に見学に行ったときにどこを見るべきか分からない場合は、この記事がきっとお役に立てます。
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結論 | 直感大事!調剤室、患者待合室、休憩室の設備を見るだけで得られる情報が沢山あります
薬局見学で見るべき場所は以下3つです。
- 調剤室
- 患者待合室
- 休憩室
そりゃそうでしょ、と思われた方。もう少しお付き合いください。
ここではそれぞれの場所の見るべきポイントについて細かく言及していきます。
私は病院薬剤師から薬局へ転職し、全部で5店舗(会社としては2社)経験しています。
数々の店舗を経験して感じた情報を惜しみなくお伝えしますね。
この情報をもとに見学した際、感じた違和感はすべて無視しないことをおすすめします。
直感は正しいことが多いです。私も実際、薬局にはじめに行ったときに感じた違和感が後に大きくなり、悩んだこともあります。
自分の直感を信じましょう!
少しでもあなたの薬局見学の際にお役に立てれば幸いです。
薬局見学で見るべき場所3選
調剤室
ほぼ一日あなたはそこに滞在することになります。入ってから後悔しないためにも見学時は目を皿のようにしてチェックしましょう。
安心してください。見るべきポイントは解説していきます。
意外なポイントもあるかもしれません。お楽しみに。
置いている調剤機器を確認する
置いている調剤機器の確認は
- 薬局の多忙さ
- 働きやすさ
2点から重要です。
その薬局の忙しさは散剤分包機へのお金のかけ方でなんとなく見えます。
Vマス分包機を使用している場合、そこまで忙しくないことが多い気がします。
が、散剤の処方枚数は少ない可能性高いです。
円盤型分包機の中でも円盤ユニットが2つあるタイプを使っていたり、散剤分包機が2台置いている場合は、散剤が多いことを覚悟した方が良いです。
働きやすさに関しては主観が入りますが、Vマス分包機を使用する薬局は働きづらいです。
散剤が来るたびどきどきします。
すみません個人の感想です…。
Vマス分包機、個人的にはすごく苦手意識があります。いまだに難しいと思ってます。
病院薬剤師の皆さんの中には、Vマス分包機を使用したことがない方もいるかもしれません。その方たちは私と同じような気持ちになる気がします。
Vマス分包機を使用したことがない方が、Vマス分包機を使う薬局に転職する場合、自信がつくまでしっかり練習させてもらいましょう。
一方、ODPの機器がどのようなものが入っているかは散剤分包機ほどの差は出ない印象です。
病院で導入されているものと比較したら小さいですが、薬局間での差は小さいですね。
レジが服薬指導の席から離れた場所に置いてあるか
意外なチェックポイントかもしれません。
しかし重要です。
レジの置かれている場所は必ずチェックしておいたほうがいいです。
ベストは服薬指導の席から離れた位置に独立して設置されている状態です。
中には服薬指導席の間に紛れるように置かれている薬局もあります。
服薬指導の席に隣接してレジがある場合、薬剤師が流れで会計まで済ませることになる場面が出てきます。
たとえお金の計算が得意だとしても、会計なんてしないほうがいいです。
ただでさえミスをしないよう神経を使う服薬指導の際に、会計という別の意味で神経を使う作業を挟むことはリスクしかないです。
見学の際に薬局側から「基本は事務さんが会計しますよ。」と言われても、服薬指導席の間にレジがある場合は疑ったほうがいいです。
調剤監査台に椅子はあるか
調剤監査台に椅子がない場合は業務中立ち仕事メインとなることが確定します。
そして、外来が忙しい薬局である可能性が高いです。
外来が忙しい薬局は、椅子を置くスペースを確保するくらいなら人の動線を優先します。
座る時間もないので椅子を用意する発想とはなりづらいです。
私が今まで勤務した薬局の中で、調剤監査台に椅子がない店舗は一店だけでした。
そしてその店舗が最も外来が忙しかったです。
こうお伝えすると調剤監査台に椅子がない薬局は避けようと思われるかもしれません。
しかし立ち仕事メインの良いところもあります。
有名な研究なのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、座っている時間が長いほど死亡リスクが増加することがわかっています。
特に脂質異常症、高血圧症、糖尿病などの基礎疾患を持つ方は、立ち仕事メインというのは健康面で有用でしょう。
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC study)の調査に参加した、64,456 名(男性 29,022名、女性 35,434 名)を解析対象者と、平均 7.7 年間追跡調査したデータを用いました。
参加者全体では、日中の座位時間が 2 時間増えるごとに、死亡リスクは 15%増加することが認められました。生活習慣病の有病者では、脂質異常症では 18%、高血圧では 20%、糖尿病では27%の死亡リスク増加が認められました
Journal of the American Heart Association,2021 年 6 月 14 日発刊
他にも立ち仕事が苦にならず忙しい薬局で集中して業務を行い方には、向いています。
服薬指導時に指導する薬剤師用の椅子はあるか
服薬指導用の席に椅子がない場合も業務上立ち仕事メインとなる可能性が高いです。
そしてこちらも、外来が忙しい薬局である可能性があります。
さらに、調剤監査台で立ちっぱなしよりも服薬指導の席で立ちっぱなしの方が経験上つらかったです。
患者待合室から見えるので落ち着きのない動きはできないですし、調剤監査台よりも動ける範囲が狭い。
片脚で立って浮いてる方の足首を回したり膝を曲げ伸ばししたりしてましたが、疲れ方がちがいます。
ただ、立ち仕事メインの仕事は前述の通り死亡リスクを下げるという意味では有用です。
腰痛や膝痛などの立ち仕事をする際の苦痛が強い方以外は、「立ち仕事がメインになる」というのを織り込んだ上で検討してみてください。
服薬指導時に患者さん用の椅子があるか
座る席と立つ席両方ある場合は、割合が大きい方を見てくださいね。
患者さん側の席に椅子がない場合は、一人当たりにかける服薬指導の時間が短くなるような設計と思われます。
患者さん一人との会話を最小限にしたい場合は希望と合致するかもしれません。
その分回転率が高く、一人でさばく患者数が多く求められている場合もあります。
服薬指導の時間を短くしてほしいという患者さんの都合を考慮して設計されている場合
患者層は年齢層低め・定期内服薬数少なめと予想されます。
認知機能正常、薬剤管理も問題ないような若年者が相手の場合、速さが求められます。
患者さんの席に椅子がないような薬局は、調剤監査や服薬指導を速さ重視で行うことが苦にならない場合は適した職場となります。
服薬指導用の机に十分な広さがあるか
当たり前ですが、机が狭いと作業スペースが確保できず非常に不便です。
軽い処方ばかりを扱う薬局とかでない限り困ります。
机が狭いデメリットは不便なだけではありません。
狭いスペースでの薬の確認は気が散りミスの原因にもなりかねないので、机は広くものが少ない状態が理想です。
作業スペースが足りているかの目安は、
- 机の上に物が積み上がっていない
- 机の上に処方せんが散乱していない
- 机の近くに収納スペースが確保されている
といった点から読み取れます。
患者待合室
患者待合室をチェックすると、意外と得られる情報多いんです。患者層に関する情報はここに詰まっています。
テレビはあるか
テレビがあるメリットは2つです。
- 患者さんの待ち時間の暇つぶし代わりになるので、薬剤師側の心の余裕がある
- テレビの音で服薬指導の声が紛れるので、個人情報保護の観点から比較的安心である
現代はスマホを所持している人が多いので、暇つぶしの観点からは一見テレビは不要そうです。
しかし個人的な感覚として、年齢が上がるほど待ち時間に携帯よりもテレビを視聴している割合は多いように感じます。
そのためテレビの有無は(特にご高齢の)患者さんの待ち時間の充実度に影響します。
この際盲点なのが、テレビがあっても地上波を流していない場合があることです。
薬局の中には、間違い探しのクイズとか健康系の配信を流している場合があります。
見学に行った際、患者さんたちがテレビに食いついていれば良いのですが、そうでない場合、暇つぶしとしての役割は果たせていないかもしれません。
2つ目のメリットの遮音効果は、特に若年層に支持される傾向があります。
薬局へのよく寄せられるクレームの一つとして
「大きい声で説明されるから他の患者さんに病状が伝わってイヤだ」
というのがあります。
特に病院薬剤師からの転職の場合、はじめは慣れずに声の大きさに気を配らない可能性があります。
テレビが流れていると、その懸念は少し薄れます。
音楽を流している薬局もありますよね。遮音という観点ではそちらも有効そうです。
OTCや医療用品、お菓子はどのようなものが置いているか
置いてあるOTCや医療用品、お菓子から患者層が読み取れます。
患者層といえば、もちろん近隣クリニックの診療科からある程度予測できるものです。
しかしOTCや医療用品から、もっと細かい情報が得られる場合があります。
一般的に、皮膚科の門前薬局はテープやドレッシング材が多いでしょうし、小児科の門前薬局は服薬補助ゼリーやスポイトが販売されていたりします。
しかし、同じ「皮膚科」を標榜するクリニックの門前薬局でも、他に販売されているものに個性が出てきます。
- 介護シューズや杖、高齢者向けのオムツが販売されている
- ロキソニンSなどのOTC、妊娠検査薬、化粧品が大きくフェイスをとって販売されている
前者と後者で患者層が違いそうですよね。
前者はADL低下した高齢者が多そうです。後者は若年層が多そうです。
また、意外と売られているお菓子でも患者層が読み取れます。
- レトロなパッケージデザインの見慣れないお菓子
- 正直なところあんまりおいしそうとは思えないし、誰が買うんだ、なぜ置いてるんだ、と思うようなお菓子
は、高齢者が多い薬局にありがちです。
ご高齢の方にはお菓子の売れ行きも良いんですよね。
休憩室
休憩室はスタッフ層が色濃く出ます。
働きやすさに直結する人間関係を推測できるという点で、こちらも要チェックポイントです。
スタッフ専用のトイレはあるか
休憩室にトイレがない場合は、患者さんとトイレ共用です。
気になる方は休憩室にトイレがある薬局をおすすめします。
以前勤めていた薬局では、患者さんがトイレを使用した後に汚れてしまってしばらく掃除で使えなくなったということがありました。
ただ、一般的には患者さんとトイレ共有の薬局が多いです。
スタッフ専用のトイレを求めると大きめの薬局になることが多いです。
スタッフ専用トイレがある場合、トイレ掃除が2箇所になるデメリットも考えられますね。
給湯スペースや水回りは清潔か
個人的には重要チェックポイントです。
勤めているスタッフの性格が出ます。
薬局はだいたい女性が多い職場なので水回りはきれいなことが多いですが、そうじゃないこともあります(経験談)。
キレイ好きの方は確認必須です。
また、特段キレイ好きじゃない方もスタッフの性格を確認するのにおすすめの場所です。
水回りをキレイに保っている薬局は
- 部屋を清潔に保つための職場のルールがしっかりしている
- 各個人の性格によってきれいに保たれている(少なくとも一人は几帳面な方がいる)
のいずれかです。
私が勤めていた管理薬剤師がしっかりした店舗では、定期的に全員分のマグカップの塩素消毒もしてくれていました。おかげで全員茶渋知らずピカピカのカップでした。
どちらかまで見極められなかったとしても、水回りを清潔に保てている時点でしっかりした薬局の可能性は上がります。
冷蔵庫は秩序が保たれているか
薬局見学の際にスタッフ用の冷蔵庫まで覗かせてもらえるかは難しいところですが、もしも覗けるなら有用な情報が得られます。
冷蔵庫の秩序が保たれている薬局は、水回りがきれいな薬局同様、しっかりした薬局の可能性が高いです。
「秩序が保たれている」をもう少し言語化します。
- 液こぼれや汚れの付着がない
- 賞味期限切れや傷んだ食品がない。
- 特定の一人が占領していない
清潔に使われているかと同じくらい、もしくはそれ以上に特定の一人が冷蔵庫を占領していない、というのは個人的な注目ポイントです。
誰か一人が大きく冷蔵庫を陣取っている、それが常習化している場合。
薬局内の圧倒的権力者の可能性が出てきます。
もちろん違う場合もあります。
ただ、あとで面倒なことにならないように、冷蔵庫内の陣地争いでの強者は、薬局内での権力者ではないかと注意して見た方が良いです。
以前勤めた店舗にいらした圧倒的強者の事務さんは、冷蔵庫にそれはそれは大きな文字で名前を書いたお菓子を大量に置いてました。
ロッカーは秩序が保たれているか
また秩序の話です。ロッカーは個人がプライベートに使用していい場所なので、個性が見て取れます。
なので、どういった方が働かれているのか読み取るのに有用です。
基本的にはロッカーの開き戸の表面は何も貼られておらずきれいなことが多いです。
ロッカーの表面になにか貼られていたときには注意が必要です。
たとえばなにかのキャラクターのシールや特定のアーティストの写真がペタペタ貼られていた場合。
その職場の強者の可能性があります(経験談)。
基本的に職場のロッカーは私物ではないのに、自分の好みにデコレートする強メンタル、それを許す周囲のスタッフ(制御できていない可能性)、というのが垣間見えます。
※もちろん全く問題ない場合もあります。
ちなみに買い物メモがマグネットに貼られていたりするのは問題ないかと思います。
ポイントは違和感を感じるかどうかです。
ロッカーに違和感を感じたら、スタッフをよく観察することをおすすめします。
まとめ
薬局見学で見るべき場所として
- 調剤室
- 患者待合室
- 休憩室
を挙げ、それぞれから読み取れる情報について解説しました。
最後に大事なことを2つお伝えします。
1つ目に、どんなに探しても完璧な職場はありません。
「完璧」がないのは世の摂理です。そこは飲み込んだ上で転職活動を始めましょう。そうすることで理想とのギャップに苦しまなくてすみます。
また、人によって職場に求める条件は異なります。
大事なのは、自分の中で許せること、許せないことをはっきりさせておくことです。
2つ目に、「職場」は変化していきます。
職場もそこに勤める人間も生き物なので、形を変えていきます。
転職したあとに職場の好きだった部分が変わってしまったり、尊敬していた人が退職することもあります。
それなら、見学で良い職場か見極めることに意味はないのではないかと思われるかもしれません。
見極めること自体に意味はあります。
しかし、変わりやすい要素を理由に転職を決めるのは危ないかもということを知っていただければと思います。
- 尊敬する若い女性の先輩がいる→結婚・出産で退職するかも?
- 人数が多くてゆとりを持って働けそう→退職で人員不足すると状況変わるかも?
上記のように職場の「人」に関する要素は変わりやすいので注意が必要です。
一方、職場の福利厚生や隣接するクリニックの診療科目、患者層などは変わりにくいかと思います。
社長が高齢でなければ、社長が変わることも少ないので会社の方針も変わりにくいです。
職場選びの参考になれば幸いです。
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